LAZIO, IN BOCCA AL LUPO! |
| (ラツィオ、グッドラック!) |
| セリエA開幕前に、ラツィオのスクデットを予想した人? さて、何人が手を挙げるだろうか。 |
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開幕前のメルカート。話題を独占したのは、常々主力を放出して世間をあっ
と言わせる倹約クラブのユヴェントスでもなければ、元祖大金つぎ込みクラ
ブのインテルでもなかった。南はロ−マのクラブ、ラツィオだったのだ。偏
見があると思われては困るので註をつけておくが、イタリアで3大クラブと
言われるユーヴェ、インテル、ミランが例年オフシーズンの話題をほぼ独占
してきただけに、ラツィオが脚光を浴びるのが意外だった。
食品コングロマリット(CIRIO)の大会長である、セルジオ・クラニョッティ
が、イタリアサッカークラブでは初めて、株を市場に上場。そこから得る潤
沢な資金を元に、実に日本円にして100億円以上の大金を使い、大型補強を
敢行した。連日、代表クラス獲得で新聞を賑わせた。とどめにアトレチコ・
マドリーの会長と急激に関係が悪化し、突如移籍の噂がたったヴィエリを電
光石火の如く獲得。実はユヴェントスも彼を狙っていたのだが、ラツィオが
大金を積んで、わずか3日で彼の心を射止めてしまったのだった。
お陰で、各国代表クラスの選手がベンチウォーマーとなりうる状況ができた。
しかし、新加入の選手がこれだけ多くては、チームとして機能するためには
多くの時間が必要である。つまり、スタートダッシュで出遅れる可能性の大
きいラツィオのスクデットはないと思われていたのだ。
実際、序盤戦のラツィオは全く機能していなかった。頼みのヴィエリが、コ ッパイタリア戦で激しいタックルを受け、靭帯損傷。3ヶ月の戦線離脱と宣 告される。また、杯で靭帯を痛めたネスタは、未だリハビリの日々・・・。 ケガ人が多く、メンバーが固定できない状態で、チームは引き分けに持ち込 むのが精一杯。5節では、ホームでは元気のいいペルージャに終始試合のペ ースを捕まれてしまった(2対2のドロー)。6節では、それまで勝ちがな かったヴェネツィアに勝ち点3を献上(2対0で完敗)。代表クラスが揃う 豪華な顔ぶれには到底似つかわしくない戦績だった。そして、エリクソン解 任か?という文字が新聞を踊り出した第11節。ラツィオは目覚めはじめた。 第11節。サポーターが一番燃える、ローマダービー。ダービー戦は、その時 の順位に関係なく、お互いの意地がぶつかる激しい試合になことは有名だ。 第10節終了時点で、ティベレ川対岸のクラブ・ASローマは、トッティが非常 に好調、チームも首位戦線に絡む活躍をしていた。一方、川向こうのクラブ は半分から割って下位の順位に低迷中。しかし、試合前から、ロマニスタと ラツィアーレは激しい意地のぶつかり合いを展開。クルバ・スッド(スタジ アム南側のゴール裏。ロマニスタが陣取る)には、ローマカラー(赤とオレ ンジ)で書かれた、「S.S. CIRIO 1997-」という皮肉たっぷりの垂れ幕が踊 る。一方のクルバ・ノルド(北側)には、低迷するクラブに多少怒りを感じ ながらも、ラツィオを愛するサポータがーが大挙詰め掛けた。スタジアムは 満員御礼。貴賓席には、両クラブ会長をはじめ、イタリア代表監督(元ラツ ィオ会長・現イタリア代表監督)ディノ・ゾフ、そして、ドーピング問題で イタリアを訪れていたマラドーナの顔も見える。スタジアムは最高の盛り上 がりを見せる・・・ 90分は異様な雰囲気の中、あっという間に過ぎていった。結果は3対3のド ロー。イエローカードが乱れ飛び、ASローマ側に退場者を1人出す、荒れた 試合だった。しかし、試合をリードしたのはラツィオだったように思う。デ ルベッキオに先制されたが、ミスター・ラツィオ、マンチーニが、ミハイロ ヴィッチからの長い縦パスを頭越しにダイレクトで決めたゴールが一気に流 れを引き寄せた感がある。ミスターと呼ばれる男の奮闘で、チームが活気付 いたのは間違いないだろう。終盤、10人になったローマに2点リードしてい ながら追いつかれたのは残念だったが、それまでの戦いとは比べ物にならな いほどラツィオのチーム全体が奮闘した試合だった。 ラツィオ連勝の幕開けは、第12節のユヴェントス戦だった。この試合で、待 ちに待ったディフェンスの要・ネスタがリーグ戦復帰。キャプテンマークを 巻いて登場。試合序盤はユーヴェが完全にペースを掴み、両サイドからもセ ンターからも怒涛の攻撃を仕掛けるが、ことごとくネスタが潰す。心配され た試合感の鈍りを全く感じさせず、ほぼパーフェクトなプレーぶりだった。 そればかりか、凄みさえ増した気がした。試合は徐々にラツィオの粘り勝ち の様相を呈してくる・・・ユーヴェが見せた一瞬の隙をサラスが逃さなかっ たのだ。彼の技ありのゴールが決勝点となり、ここで王者に引導を渡した。 この試合以降、ラツィオはチーム新記録となる9連勝を樹立することになる。 |
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ラツィオは、個人的に、季観ていてとても好きになったチームである。昨季
は、カウンター狙いで、ひたすらディフェンスを固め、チャンスメークはマ
ンチーニに頼ることが多かったが、今季は非常に攻撃的なスタイルになった
と言えるだろう。前線から、サラス、ヴィエリが激しくチェイシングし、中
盤のスペースをアルメイダが狂ったように走り回る。ボールあるところアル
メイダあり、といった感じだ。ネスタに「七つの肺を持つ男」と形容された
彼は、ユース代表の頃から名前が聞こえてくる選手だったが、セリエ2年目
ということもあるのだろうか。今季は、その持ち分を存分に発揮し、プレス
の評価も非常に高い。実際、その運動量は観ていて圧巻である。システムは
4-4-2で、4バックのラインディフェンスを敷き、中盤は4枚並んでいるオ
ーソドックスな陣形である。ディフェンスラインを高く保ち、どの局面でも
積極的にプレスをかけにいく。そして奪ったボールを正確なロングキックで
前線に送ったり、オーバーラップをかけるサイドにあずけて折り返す、とて
もシンプルでわかりやすい攻撃である。ポストプレーがうまく、自分でも強
引に突破していくことのできる「重戦車」ヴィエリと、ボールコントロール・
キープの上手な「闘牛士」サラスのコンビは、息が合っており、観ていて非
常に頼もしい。サイドをつとめるコンセイソン、スタンコヴィッチは、積極
的に突破をしかけていき、後ろからオーバーラップをかけるサイドバックの
選手と共に、鋭くサイドをえぐっていく。ディフェンスラインでは、センタ
ーのネスタとミハイロヴィッチが相手のチャンスを摘み取っていく。一方が
アタックに行き、他方がカバーリングに入る。絶妙のコンビネーションであ
る。
マンチーニという存在も、ラツィオにとって心強いものである。彼は、以前 は2トップの一角を形成していたが、今や完全なディフェンシブ・ハーフと なった。彼がこれまでに決めたゴールは、どれも印象深く、今でも語り種に なっているものが多い。本当は前線で得点に絡みたいのかもしれない。しか し、攻撃的なチームの中で、常にディフェンスを考えポジションを取ってい るところからは、自分を押し殺してもチームの勝利に貢献するマンチーニの 姿が浮かび上がってくる。FWとして出場していたときよりも地味な仕事をこ なすようになり、プレスの評価も下がってしまったが、マンチーニのプレー は注目に値すると思う。 また、選手個人個人が、非常に好調であることがラツィオが首位を走る要因 の1つであろう。 ユヴェントスを例にとってみよう。要のデシャン、ジダン、デルピエロなど は、W杯での疲れを色濃く残しながらリーグ戦に突入した。結果、チームは なかなか調子が上がらず、しかもデルピエロの長期離脱も手伝って、過去5 年間で最悪のシーズンになろうとしている。(ようやく上昇の兆しは見え始 めているが。)ところが、ラツィオの場合、W杯に出場した選手は多いが、 極端にコンディションを落としている選手はいないようである。それぞれが、 首位を走っているという充足感と、タイトル奪取に向けて、モチベーション を高めているはずである。このまま行けば、悲願のスクデット獲得は達成さ れそうだ。 ただし、ここに不吉な前例がある。 昨季の同時期、ユーヴェとインテルが激しい首位争いを演じている一方で、 ラツィオは快調に勝ち点を積み重ねていた。そして、あれよあれよという間 に、首位争いに殴り込みをかけてきたのだ。三つ巴でユーヴェが辛くも首位 をキープしていた4月のある日、ホームでユヴェントスと対戦。勝てば首位 に立てるチャンスだったが、1対0で敗れた。その後のラツィオは、それま で常勝していたのがうそのように負けが込み、結局シーズンを7位で終了。 散々な結果となってしまった。また、UEFAカップ決勝でも、インテルに3対 0と完敗した。 結局、破竹の勢いがあったラツィオがコッパ・イタリアを獲得するだけで終 ってしまったのだ。昨年はたしかに、選手層が薄く、長いシーズンを乗り切 るだけの戦力がなかったにせよ、たった1度の大一番での敗戦で、そこまで 大崩れしてしまうとは、多少心配である。極度のプレッシャーに弱く、勝ち なれていないのかもしれない。昨年の二の舞にならなければいいが。 また、昨季、コンスタントな活躍をし、印象深かったチェコ代表のネドヴェ ド。彼は今季途中でケガで戦列を離れ、最近復帰してきたのだが、どうも具 合が悪い。彼のところでリズムが狂ってしまう感があるのだ。ラツィオの持 ち味は両サイドの運動量の豊富さにあると思うのだが、ネドヴェドが左サイ ドに入ったとき、左サイドバックとのコンビネーションがあまり良くなく、 また、攻撃から守備へ切り替わったときの対応が若干遅いようである。3月 21日に行われたヴェネツィア戦では、ラツィオは左サイドをかなり攻め込ま れていた。センターがしっかりしているし、アルメイダもカバーに入ってく るのでそれほど大事には至っていないが、それにしてもネドヴェドをスタメ ン起用するのは疑問が残る。ネドヴェドがケガで戦列を離れていた間に代役 をつとめていたスタンコヴィッチのほうが、コンスタントに機能していた気 がするのだが・・・このポジションは注目して観ていきたい。 そして最大の懸念事項は、選手層の厚いラツィオの中で、唯一代わりのきか ないのがアルメイダだということだ。実際、アルメイダが警告累積で出場停 止だった試合がある。代役をつとめたスタンコヴィッチが卒なくこなしたよ うに見えたが、アルメイダのような圧倒的な動きが出来ず、試合後半は完全 に防戦一方となってしまった。これからシーズン終了に向け、疲れも出てく るし、第一ケガは予測できるものではない。代役をスタンコヴィッチがこな すのであれば、スタンコヴィッチのレベルアップがのぞまれる。 なにはともあれ、ラツィオは、25年ぶりのスクデットに向けて、ひた走って いる。上記にあげた心配を「なんだ、取り越し苦労か」と思わせるような戦 いを披露して欲しいものである。 |
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26 Marzo 1999 Copyright (C) 1999 Yuko KOJIMA. All Rights Reserved. |