サ ッ カ ー の 戦 い 方


〜最低限の行為準則〜

この文章は、FCストーンズができて間もないころ(1994年ころ?)に書いたものです。当時に比べると、ストーンズのサッカーは格段の進化を遂げています。結成から暫くの間は、人数が足りずに試合を諦めて「3対1」か何かをやって帰宅するといったことも一度や二度ではありませんでした。
サッカーを本物の樹木にたとえるならば、ここに書かれてある内容は定規と鉛筆だけを使って描いた直線的な樹木の絵のようなものです。このような絵とは比較にならないほど、本物の樹木はもっと複雑な様相をしている。したがって役に立つものかどうかは全くの疑問ですが、暇があったらお読みください。
−2000年梅雨−


<総論>

 サッカーの戦略ないし戦術についての細かい分析は専門書に任せるとして、ゲームに臨むに際し頭の片隅に入れておいた方がよいとおもわれる最低限の行為準則を立ててみよう。
 サッカーにおける勝敗が、得点数から失点数をマイナスして得た数値の大小によって決せられる以上、ゲームにおける全ての行為の最終的な目的は「より多く得点し、より少なく失点すること」である。
 得点するためには「得点するための行為」を、また失点を防ぐためには「失点を防ぐための行為」を当然しなければならない。
 ここで例えば野球においては、攻撃側のチームと守備側のチームがイニング毎に交代するので、「得点するための行為」と攻撃、ならびに「失点を防ぐための行為」と守備は、それぞれ完全に対応する(攻撃側のチームはどんなに大きなミスをしても失点することはあり得ないし、守備側のチームはいくら頑張っても得点し得ない)。
 しかしながらサッカーにおいては、攻撃をするチームと守備をするチームとが試合中常に交代し得ることから、攻撃時であっても「失点を防ぐための行為」をしなければならず、守備時であっても「得点するための行為」をしなければならない。この意味においてサッカーでは、「得点するための行為」と攻撃、ならびに「失点を防ぐための行為」と守備は、それぞれ完全には対応しない。
 ただサッカーにおいても、攻撃と守備を明確に区別して認識し、それぞれの状態における行為理念を把握しておくことが重要であることには変わりがない。
 サッカーにおいて「攻撃」とは味方選手がボールを支配している状態をいい、「守備」とは敵の選手がボールを支配している状態をいう。ボールが自陣のペナルティーエリア内にあろうと、味方選手がボールを支配していればそれは攻撃であり、敵陣のペナルティーエリア内であっても敵の選手がボールを支配していればそれは守備である。
 このように攻撃と守備を明確に区別することにより、ある時点で採るべき行為の選択基準を明確化することができるのである。


<攻撃>

1 ボールを持った選手が行うべき行為

 ボールを持った選手が行い得る行為は3つしかない。シュートかパスかドリブルである(異論もあるとおもわれるが、いわゆる「クリア」のためのキック等は、理念的にはパスに包含されよう)。
 まず、得点するためにはシュートを打たなければならない。シュートを打つこと以外による得点もあり得るが、それは敵の自殺点や何らかの偶然(例えばセンタリングしたつもりのボールが偶々ゴールに入ってしまった場合など)による得点ということになる。このような得点を考慮にいれて行為準則など立てることはできないので、やはり「得点するためにはシュートを打たなければならい」というのは正しい。しかし、シュートはどこからでも打てるというものではない。人間の能力には限界がある。自陣のペナルティーエリア付近からシュートを打っても入るわけがない。したがってシュートを打てる場所(シュートレンジ)までボールを運ばなければならない。
 ボールを運ぶ手段は2つしかない。先に挙げた3つの行為からシュートを除いた2つ、すなわちパスとドリブルである(上記した如き偶然の所産については以下触れない)。この2つのボール搬送手段のうちどちらがより有用かというと、それはパスである。なぜなら、ボールは人間より速く移動できるからである。ここでボールの移動の速さというのは、単にシュートレンジまでの直線距離を短縮する速さだけを意味するものではない。ボールが速くあちこちに移動すれば、敵は守りにくい(エアホッケーを想像せよ)。故に、ボールをもらったら、原則としてまずパスを出すことを考えるべきである。パスコースがない場合には、ドリブルしてパスコースを作れば良い。
 しかしドリブルも、パスができない場合の次善の策でしかないわけではない。状況によっては、まずドリブルすることを考えた方が良い場合もある。例えば敵陣のゴール前にスペースがあり、そこまでちょっとドリブルすればシュートを打てるような場合などがそうである(ドリブルが得意な選手がおり、その選手がドリブルすることによって時間が生まれ、攻撃をより良く組み立てられるというような場合もある。余談だが、ディフェンスラインとフォワードの間の距離が極端に短くなり、オフサイドトラップの重要性および完成度が著しく高くなったことに伴って得点数の減少が常に懸案とされる現代サッカーの今後の展開において、近い将来ドリブルは再認識・再評価されることに必ずなると筆者は考える)。
 以上(シュート・パス・ドリブル)が、攻撃時においてボールを持った選手が採り得る行為及びそれらの原則的な優先順位である。

2 ボールを持っていない選手が行うべき行為

 攻撃している場合であっても、ある時点でボールを持っているのは1人だけであり、その他10人はボールを持っていないことに思い至らなければならない。すなわち、大部分(10÷11=約91%)の人間はボールを持たずに攻撃に参加するのである。したがって攻撃の巧拙は、ボールを持たない選手の働きに負うところが非常に大きい。ボールを持っていない状態において「攻撃に参加しているのだ」という意識をどれだけはっきりと持てるか、またその意識に従ってどれだけ「役に立つ」動きに出られるかが、攻撃の成功率を大きく左右する。
 ボールを持っていない選手が攻撃時に行うべき行為はかなり多様である。したがって、筆者の意欲と能力の限界上、その全てをここに記すわけにはいかない。ただ、大きく分けて、「ボールを持った選手の行為をサポートする行為」と「それ以外の行為」の2種類があるものと考えられる。
 ボールを持った選手の行為をサポートするための行為は、主にボールを持った選手(「A」とする)の近くにいる選手(Aの近くにいる選手に限らず、Aの行為をサポートする選手を「B」とする)によって行われ、また、Bの採るべき行為が何であるかは、原則として、Aが現在行っている行為が何であるかによって決定される。
 まずAがシュートを打とうとしている場合またはシュートを打った場合、これをサポートするための行為は、いわゆる「詰め」である。「詰め」は厳密にはAの行為自体をサポートするものではなく、それ自体が独立したBによるシュートでもあるわけだが、Aの意図した結果を実現すべく行われる行為であることから、シュートのサポート行為としてここでは分類しておく。
 またAがパスを出そうとしている場合またはパスを出した場合(パスを現に出そうとしているかまたは出している以上、Aはパスの受け手を既に見つけていることに当然なる)、そのパスの受け手から更にパスを受けられる位置にBは移動すべきである。
 最後に、Aがドリブルをしている場合、Bは、Aから直接パスを受けられる位置に移動すべきである。
 ただし、とくにサッカー歴の長い者であれば、Aが上記各行為を行っている最中に、Bの行為をサポートする行為(その主体を「B′」とする)や更に進んでB′の行為をサポートする行為を既に頭に描き、これを行っているのがむしろ常であろう。このような意味からも「ボールを持っていない選手が攻撃時に行うべき行為はかなり多様である」と前述したのであるが、本章に限らず、本書での分析は、あくまで最低限の準則を立てるに必要な限度にとどめる。
 「それ以外の行為」は、主に失点を防ぐための行為である。攻撃時においても、失点を防ぐための行為は必要である(「得点するための行為」と「攻撃」、「失点を防ぐための行為」と「守備」は、前述したようにそれぞれ完全に一致するものではない)。例えば自陣深くで味方選手がボールを持っているような場合(したがって「攻撃」ではある)には、万が一ボールを奪われた場合に備え、危険な位置にいる敵の選手をフリーにしないようにしなければならない。


<守備>

1 守備時に行うべき主な行為は、攻撃時に行うべき行為のちょうど裏返しである。シュートレンジにボールを運ばせない。シュートを打たせない。ここで「主な」としたのは、攻撃の裏返したる行為の他に、「攻撃への転換を図る行為」即ちボールを奪う行為(チャレンジおよびインターセプト)もまた守備の重要な要素として存在しているからである(また守備時においても、「得点するための行為」をすべき状況がある。これは、<攻撃>の章の2項において述べた「失点を防ぐための行為」のやはりちょうど裏返したる行為である。例えば敵陣深くで敵の選手がボールを持っているような場合《したがって「守備」ではある》には、万が一敵の選手がミスをしてボールが味方に渡った場合に備え、できるだけシュートを打ち易い位置に移動するなどして得点の可能性を高める必要がある場合もあるであろう)。ただ、現にボールが敵チームの支配下にある以上、まずはシュートレンジにボールを運ばせず、シュートを打たせないことを目的とした行為を優先して行うべきであろう。そうして敵を追い込み、結果としてボールを奪えるようにすればよい(この点については後で多少述べる)。
 失点を防ぐ上で最も重要なのは、シュートを打たせない、打たれたとしてもボールを自陣ゴールに入れさせないことであるが、まずはその前段階である「ボールを運ばせないための行為」から述べていこう。

2 さて、攻撃において、ボールを運ぶために採るべき第1の行為はパスであった。したがって守備においてまず行うべきことは、パスをさせないことである。パスという行為は、その受け手がいなければできない行為である。よって、「パスをさせない」ためにまず行うべきことは、敵の選手がパスを受けられないようにすることである。「敵の選手がパスを受けられないようにする」方法は、パスの種類に応じて大きく2つに分けられる。足元へ出すパスへの対処とスペースへ出すパス(いわゆる「スルーパス」など)への対処である。前者のうち第1は、パスコースを物理的に消すことである。すなわち、パスの送り手とパスを受けられる位置にいる敵の選手とを結ぶ直線上に立ちふさがれば良い。第2は、パスを受けられる位置にいる敵の選手のすぐ近くで、しかもその選手にパスが出ればいつでもボールを奪える位置に移動し、実質的にパスコースを消す方法(パスを出す意欲を失わせる方法と言ってもよい)である。
 スペースへ出すパスについても、足元へ出すパスへの2つの対処は当てはまる。ただスペースへのパスの場合、パスの受け手およびパスコースが大きく動くので、その動きを考慮にいれた対処をする必要がある。スペースへ出すパスへの対処にはもう1つある。そのスペースを消す方法、つまりパスが放り込まれそうなスペース内へ移動する方法である。
 以上のような「パスをさせない行為」を組織的に行うことにより、より効率良く敵を追い込む守備の手法が、いわゆる(ワン)サイドカットである。が、(ワン)サイドカットの具体的方法を述べ始めると非常に長くなり、最低限の準則を立てるという本書の趣旨を逸脱してしまうので、ここでは述べない。

3 次にドリブルへの対処だが、ドリブルを全くさせないよう常に試みること、すなわちボールを奪うよう常に試みることは得策ではない。なぜならその場合、かわされる危険性も高く、1人でもかわされると守備のバランスが一挙に崩れてしまうからである(自陣ゴール前でかわされた場合に生じ得る状況を考えよ)。この場合はまさに前述した如く、「敵を追い込み、結果としてボールを奪うこと」を考えればよい。つまり、ドリブルの方向を、原則としてそのドリブラーにより近い方のタッチライン側に限定するよう動けばよい。もっと具体的にいえば、ドリブラーにできるだけ接近し(一発でかわされ得る程には近くなく、しかもドリブラーが油断をすればいつでもボールを奪える距離)、フィールドの内側から外側に向かってこれを追いかけ、追い詰めるのである。こうすると、ドリブラーの動ける範囲が狭められ、したがってミスを誘いやすくなるうえ、「ボールを運ぶ」というドリブルの最重要機能を減殺させ得ることになる。ただドリブルは、パスまたはシュートのための準備行為たる性質を常に帯びているので、ドリブルされている場合にはパスおよびシュートへの対処も頭にいれておかなければならない。

4 シュートへの対処は最も単純である。シュートコースを消せば良い。シュートコースの合理的な消し方について、ここで敷衍する必要はないだろう。あらゆる市販の「サッカー書」に書かれている。

5 最後に、ボールを奪う行為(チャレンジおよびインターセプト)についてであるが、この行為はあらゆる場面で可能であり、しかも成功すれば最も好ましい状況(つまり攻撃への転換)を作り出せるものでもあるのだが、ドリブル対策のところで述べたように、失敗した場合のリスクが非常に大きい。守備の中で最もギャンブル性の高い行為である。したがって、軽率にボールを奪いに行くことは慎まなければならない。くどいようだが、まずは他の手段で敵を追い込み、結果としてボールを奪えるようにすればよいのである。

                ・  ・  ・

 以上、行為準則などと銘打って勝手なことをいろいろと書いてみましたが、ここに書いたことが「正しい」などとは書いた本人も思っていません。だいたい、芸術とまで称されるサッカーに「正しい」やり方などある筈もないし、あって欲しくありません。ただ、ストーンズには全くの未経験者もいること、そして、経験者であればその経験を通じ断片的にであれ集積してきたゲーム運びについての様々な知恵を未経験者が等分には持ち合わせていないように見受けられる現状に鑑み、錯綜したフィールド上の諸行為を素人なりに整理してみようとしただけです。しかしながら、ここまで極端に整理してしまうと、もはや実戦にとって有用とは言えないかも知れませんが・・・。
 くだくだしい理屈を捏ねてみても得るものは乏しい。さあ、外へ出て、ボールを蹴ろう!                                  −おわり−


Copyright (C) 2000 Koji NOGUCHI. All Rights Reserved.