「いま、かの国を想って」 |
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98-99 セリエAは、ミランが久し振りのスクデット争いに勝ったシーズンだっ
た。ナカタが、メディアをおおいに驚かせ、「日出ずる国のジョカトーレも、
けっこうヤルぞ」という印象を残したシーズンだった。インテルが、ユーヴェ
が、凋落の一途をたどったシーズンだった。
98-99 セリエAは、やっぱりラツィオが勝ちきれなかったシーズン、だった。 さて、ペルージャと最後までA残留をかけて戦った、サレルニターナ。イタリア 南部、サレルノに本拠地を置く。昨今のセリエAでは、イタリア南北間の経済格 差をそのまま象徴するように、北部のビッククラブ(インテル、ミラン、ユヴェ ントス)は、その潤沢な資金を元に贅沢な補強を敢行。またラツィオ、パルマ は、オーナーから金銭面のバックアップを受け、いまやビッククラブに引けを取 らない選手層を誇るチームとなっている。一方で、バーリやサレルニターナなど の南のチームは、選手を安く買って、高く売る、自転車操業でアップアップ状 態。しかし、サポーター達の、我が街のクラブを愛する気持ち、最後まで諦めな い気持ちは、南へ行けば行くほど、強い。サレルニターナのウルトラ然り。例え ば、アズーリ(イタリア代表)が、どうしても負けられない試合を戦う場合、戦 いの場はしばしば「ナポリ」が選ばれる。北の人々は、ちょっとリードを許し、 劣勢になると、あきらめて応援をやめてしまうのに対し、南部の人々は、最後ま で諦めずに大声援をおくってくれる、というのがその理由だそうだ。イタリアと は、そういう国、なのだ。 5月23日。セリエA最終節。ペルージャとミランが、それぞれ残留と優勝をかけ て戦っているのと時を同じくして、北部ピアチェンツァでは、サレルニターナも A残留をかけて、戦っていた。サレルニターナは、勝ちをおさめない限り、残留 できない。しかもアウエーゲーム。特別列車仕立てで、はるかサレルノから大挙 しておしよせたサレルニターナのウルトラが、「我が街のクラブ」の行く末を、 見つめる。ピアチェンツァも、敗戦すれば苦しい。ペルージャにとっては、サレ ルニターナが引き分けてさえくれれば、自分たちが敗戦しても、残留が決まる。 逐一入る、他会場の途中経過。緊迫した雰囲気が、漂う……
スタジオ・レナト・クーリ。後半ロスタイム。ミランがリードしているにもかか
わらず、大歓声があがった。 「もし、Jリーグを、戦国時代の日本でやったら、メチャクチャ盛り上がるだろ うにねぇ」とは、雑誌「番号」でお馴染みのスポーツライターS氏が、つぶやい た言葉。わたしは、ハードロックのコンサートに行ったみたいに、ブンブンと首 を縦に振った。「そう、そう思います」。何故イタリアリーグが面白いか。それ は、イタリアが、未だに都市国家の香りを強く残しているから、だと思う。「ト リノ」と「ローマ」。違う国。「ミラノ」と「ヴェネツィア」も、別。ミラノの 人に言わせれば、「イタリアの首都はローマ、と思っているのは、ローマのやつ らだけだゼ」。日曜日は、選手が代理戦争をする日。結果に、一喜一憂する。夜 が明けても、日が暮れても、カルチョの話に沸き返る。何が悲しいって、シーズ ンが終ったら、カルチョとしばしお別れしなくちゃいけないこと、なのサ…… イタリアとは、そういう国、なのだ。 日本人ジョカトーレが、また一人、旅立つ。昨季約70年ぶりにA昇格を果たし た、ヴェネツィアへ。昇格を決めた日に、偶然かの地に在住していた、友人の 話。「もうそれこそイースターとクリスマスとニューイヤーが一度に来ちゃっ たって感じあんだけ騒いだら水没する速度が速まっちゃうよなぁまったくすごい 盛り上がりだったよ騒いでいる声が街中にこだましてたもん」。ハア。それこそ 息つく間のないくらい、まくしたてていた。昨季は、11位。A残留に、成功。そ の立役者、レコバの穴を埋める攻撃的MFとして彼は起用されるのでは、ともっぱ らの噂。今季も残留に向けて、ナカタと同じアーモンド型の目をしたジャポネー ゼには、期待が集まるだろう。下位チームになればなるほど、外国人に対する期 待は大きい。「チームがお金を払って、わざわざ外国人を連れてきたのは、その 選手がイタリア人よりも優れているからだろ?」プレッシャーは大、である。 S氏は、つぶやいた。「ナナはなぁ、見てて分かると思うけど、繊細だから なぁ。プレッシャーや言葉の問題、諸々に押しつぶされないといいけど……」 そんな心配をふきとばすような活躍を、期待したい。純粋に、いまは、期待した い。 イタリア人は外国人の名前を、あくまでイタリア語的に発音する。例えば、ユー ヴェに来たフランス人「アンリ(HENRY)」は「エンリー」。ナカタは我流の発音 で「ナカァーター」。ところが、ナカタが大活躍しだしたとき、イタリアのメ ディアではある疑問が浮上した、という。 「ハテ?NAKATAを日本語で発音すると、どうなるの?ナカーターなのか、ナーカ ターなのか、はたまたナーカーターなのか?」 彼にも、「オイ、日本では彼の名前、どうやって発音するんだ?ナナーミーなの か、ナーナミーなのか、はたまたナーナーミーなのか?」と聞かれる選手に、 なって欲しい。私は、そうなって、欲しい。
がんばれ、名波浩。
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20 giugno 1999
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